「 北京研修レポート 」 |
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11月16日から2泊3日の日程で、中国の北京に行ってきました。今回の研修の目的は、親睦のある北京市地方税務局と国嘉一税務師事務所を訪問し、中国税制や会計事務所の役割等について現地調査してきました。
中国経済の勢いは、世界経済、日本経済に大きな影響を与えています。
特に、近年は中国への進出や投資、取引等が増加し、それに伴い、税理士事務所に求められるニーズも多岐になりつつあるのが現状です。そのような状況の中で太田直樹税理士事務所も皆様のサポート企業として、中国の現状を少しでもお伝えできれば大変うれしく思います。
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【 北京市地方税務局 】
北京市地方税務局は、北京市の税金等の徴収機関で、日本での国税局にあたります。中国の税収構成は日本と異なっている点に特徴があり、日本での直接税(所得税・法人税・相続税など)と間接税(消費税・酒税など)は7対3の割合で法人税・所得税等が税収を占めているのに対し、中国では、直間比が3対7と間接税が多く、その中でも「増値税(ぞうちぜい)」が税収の主となっています。
増値税とは、物品の販売等を対象とし、各物品の流通段階で付加価値に対してかかる付加価値税のことです。最終消費者が税負担者となり、税率は約17%となっています。増値税は日本における消費税と似ていますが、日本とは異なる点がいくつかあります。
まず日本では帳簿や請求書などを保存し、それを基に税額の計算をする帳簿方式と呼ばれるものを採用していますが、中国では発券(「ファーピャオ」と発音)という専用の領収証を用いて計算するインボイス方式を採用しています。この発券は中国政府公認のもので、税務局で販売しているものしか認められません。
納付すべき税額は、売上が発生した際に得意先に発行した発券の金額から、仕入の際に仕入先から受取った発券の金額を控除した額となります。増値税の申告期間は1ヶ月単位であり、毎月申告しなければなりません。そして申告し、納付した人だけが税務局で発券を購入することができます。また、日本の消費税は物品の販売等だけでなくサービスなどの役務の提供も課税の対象となりますが、中国においては役務の提供は営業税という別の税金での課税となります。
また、脱税が行われた場合、中国では、最高で脱税相当額の5倍であり、罰金金額の上限がなく、厳しい姿勢で対応しています。また、増値税では発券の保存が大変重要になることから、発券の未入手や記載の不備などがある場合も税務局から厳しく指導されます。そのため、納税者の納税意識の向上や、税務局の管理能力を高めることとなり、全体の納税環境が整い、納税者は、平等な税収待遇を受けるようになりました。
最後に「北京市地方税務局の努力は世界一流であり国内においても先進的なデータ管理をつくり、また、納税者に対して、全体的に行き届いた、あたたかいサービスを提供することが重要と考え、日々の業務に勤めている。」と説明を受け、官民一体となった、納税制度の発展に努めている姿勢に、強く感銘を受けました。
【 電子申告の普及 】
今回の訪問で一番驚いたことは、中国での電子申告普及率の高さでした。
現在、日本においても電子申告・納税を推進していますが、普及率は約1%程度で、なかなか普及していないのが現状です。しかし、中国における電子申告・納税の普及率は、約70%以上と大変高いものでした。その中でも北京市の中関村はIT関連企業が多いということもあり、普及率は約90%以上と、日本との違いに大変驚きました。
中国がどのようにして電子申告を推進した主な理由として、下記のことが挙げられます。
@ コストがかからない
書面で申告するよりも電子申告・納税を行うことで、紙代や印刷の手間のコストを抑えることができます。また、毎月申告を行うという煩雑さを考えれば、そのコスト削減効果も実感できる金額になると思われます。この点に関しては日本においても同じですが、電子申告に係る手続きの簡素化・効率化により、多くの利用者を獲得したと思われます。 一方、日本は、電子申告時の電子署名が必要なため、手続きが煩雑になっていました。しかし、平成19年1月より個人の確定申告等の電子署名が不要となる予定のため、今後は、電子申告普及率も増加すると思われます。現状の電子申告については、納税者の利便性を高めるため、国税局・会計事務所が一体となって取組んでいますので、将来的には、中国のような普及率になると思います。
A 時間がかからない
広大な中国には、多くの人が暮らしています。そのため、企業・納税義務者も多く存在します。そのため書面での提出は、税務局の混雑を招き、時間を無駄に費やすこととなります。日本においても、個人確定申告時の税務署は大変混雑します。しかし、電子申告であれば、わざわざ税務局へ行かなくとも申告できるので、多くの企業が電子申告に移行しました。また、電子納税も手続きも簡素化されているので、銀行窓口に並ぶことなく、ネット銀行での納付が可能となっています。
日本では電子申告・納税の普及が中国に比べ遅れています。しかし、電子申告を行う場合には青色申告の特別控除のような特典を付けるという案も出ていますので、利用者の利便性を重視した展開が今後も期待できます。中国では前述したような背景があるため、企業は電子申告に移行しましたが、その裏には、税務局の利用者の利便性を重視した、最新システムを導入するなど納税者が利用しやすい環境の整備に努めていることもあります。この点に関し日本では、国税は電子申告でできますが、地方税に関しては電子申告がまだ導入されていない所もあり、国と地方の足並みがそろっていないなど、問題はありますが、国税・地方税両方とも電子申告に対応している地域において電子申告を行っている方からは、電子申告に移行して大変手続が楽になったとのお声もあり、日本でも納税者の利便性に配慮したシステム構築が急務であり、電子申告を普及させ申告手続の簡素化を図ることが必要だと思われます。
【 国嘉一税務師事務所 】
< 事務所情報 >
事務所名:国嘉一税務師事務所
設立:2000年10月
顧問先企業:約70社
業務内容:@会計、審査の業務
A資産評価の事務
B公示の評価の審査
C税務代理
●税務資料の審査・認定
●コンサルタント等
< 事務所紹介 >
国嘉一税務師事務所は、歴史は浅いが、「真実、公正、サービス第一」を経営姿勢とし、税務・財務・金融に優秀なスタッフを揃え、事務所全体が活気に溢れています。また、2004年5月には、政府より税務代理・諮問・計画・財政評価で高い評価を受けています。
<中国での会計事務所の役割 >
会計事務所の役割は、日本と比べ、根本的な部分では共通していますが、コンサルタントや課税庁との徴収トラブルの調整など、カバーする範囲は多岐にわたっています。特に法律が経済の成長スピードに追いつけない中国においては、課税庁との徴収トラブルの調整は、北京市の会計事務所の中でもわずかしか扱えないこともあり、その重要度は非常に高いものとなっています。また、中国では土地は国家のものとなっているため、公示(借地権)・資産評価など、税法の違いから発生する業務が多く、日本の税法で実務を行っている我々には、カルチャーショックでした。
コンサルタントとして、顧問先企業対し、研修なども精力的に実施しており、租税庁との懇談会方法で税務職員と直接対話することにより、相互間で理解を深めるなど、人材育成も行っています。会計事務所にコンサルティングを依頼する企業も多く、急成長する中国経済で勝ち残るため、あらゆる努力をする中国企業の姿を垣間見ました。
中国では、経済と法律のアンバランス化の調整機関として、会計事務所に求められる役割が高く、日本の会計事務所以上に多種多様なサポートを要求されています。
太田会計も税務を含めた総合コンサル組織へと変革期に移行しつつあるため、今後は、国嘉一税務師事務所に劣らないサポート体制を整える次第です。
【 北京蛇足 】
北京といえば、中国の伝統文化の一つである京劇が大変有名ですので、北京の思い出として京劇を観賞してきました。私の中では、京劇は日本の歌舞伎のようなイメージでしたが、実際に鑑賞してみると、イメージとは全く違い、京劇は一言でいうなら正に「豪華絢爛」。役者が着ている衣装は、赤や黄色など明るい色が多く使われており、頭の飾りや靴などがキラキラ輝いてとても華やかでした。流れる音楽はもちろん生演奏で、それに合わせて唄う歌は綺麗な裏声でした。また、踊りは、羽織っているものをヒラヒラさせたりしてとても女らしい艶やかなものから、棒を使ったパフォーマンスや何回も連続でバク転をするなど激しいものまであり、とても見応えがありました。中国語がわからなくても日本語ガイドが聞けるヘッドフォンの貸出があるので、今どのような場面なのか理解でき、一層楽しむことができますので、北京に行く機会がありましたら、ぜひ鑑賞してみてください。
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≪中国税務近況≫
中国では来たる2007年1月、改正個人所得税自行納税申報弁法(以下、改正個人所得税法)が施行されます。改正により、個人の年収が12万元(約180万円)を超えた場合は、通常の所得であるか否か、勤務先の企業など源泉徴収義務者が税額を徴収済みか否かを問わず、会計年度終了後3ヵ月以内(1月1日〜3月31日)の間に、管轄の税務当局への自己申告が義務付けられました。また、年収が12万元以下の時点で既に自己申告済みであっても、その後年度内に12万元を超えれば、年度終了後3ヵ月以内に再度、自己申告が必要とも規定されています。
改正個人所得税法では、従来、月800元だった個人所得税法の基礎控除額を1,600元に引き上げ、併せて高所得者層に対する自己申告制度の拡大についても規定されています。近年の中国の望ましい成長に伴い、給与所得者のうち1993年では月収800元(約12,000円)以上はわずか1%前後に過ぎませんでしたが、2002年には52%前後に達し、低所得者の負担軽減が目的の基礎控除を、給与所得者全体の所得が向上した実態に合わせた形ともいえます。
自己申告の対象義務化により、従来は違法かどうか必ずしも明確でなかった未申告や申告漏れが、明確に違法行為として処罰可能となりました。増加し続ける高所得者に対する実質的な徴税強化策ともいえるでしょう。
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